新医協は2023年6月13日にマイナンバー法等改定法の成立に対する抗議声明を出しました。 (PDF版はこちらから)

[抗議声明]

健康保険証を原則廃止し、「マイナ保険証」との一体化を国民に強いる
マイナンバー法等改定法の成立に抗議する

2023年6月13日
新医協(新日本医師協会)常任理事会

  2023年6月2日、参議院本会議は健康保険証を原則廃止し、「マイナ保険証」との一体化を国民に強いる、マイナンバー法等改定法案を、与党などの賛成多数で可決した。各種証明書等の誤交付、公金受け取り口座や医療情報のひも付けの誤りなどのシステムの根幹に関わる深刻な実態が次々と明らかにされた。全国保険医団体連合会(保団連)始め各医療団体、高齢者団体、障害者団体、何より広範な国民の慎重審議と廃案を求める声が高まる中で法案成立を強行したことに新医協(新日本医師協会)は強く抗議するものである。
 マイナンバーカードの取得は任意のはずである。健康保険証を原則廃止し、マイナンバーカードとの一体化を強いることは、保険者が全ての被保険者に対して健康保険証を交付しなければならないという「義務」を、被保険者からの「申請主義」に転換させることになる。1958年制定の「国民健康保険法」以来のいわゆる「国民皆保険制度」を根本から変更、改悪するものであり、法案成立後は無保険扱いとなるものを大量に生み出す可能性がある。実際、医療・介護・福祉の現場からは高齢者・認知症患者・障害者など、マイナンバーカード申請・取得・管理の困難な患者・利用者への対応について困惑や懸念の声が多く挙げられている。
 また「マイナ保険証」に他人の医療情報がひも付けされたために誤情報が入力された事例や、健康保険証とひも付けされていなかったため、健康保険料を支払っているにもかかわらず窓口負担が10割となった事例など、生命に関わる可能性のある誤りや、今後の深刻な受診抑制につながりかねないトラブルの報告も挙げられている。
 さらに、患者は受診している医療機関に自分が開示を望まない医療情報を秘匿できる権限もなく、国民のプライバシーへの侵害を防げない。
一方、「マイナ保険証」対応が義務化されたことを受け、システムを導入した医療機関からは、システムが突然動かなくなるなどの不具合が続出していることが保団連によって報告されている。このまま「マイナ保険証」の一体化が進めば、医療機関における業務負担が増えることや、通常業務が円滑に行えなくなる危険性が指摘されている。
日本国憲法は、11条で「国民は、全ての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」としている。また25条では「2 国は全ての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と、国の義務を定めている。今回の健康保険証を原則廃止し、「マイナ保険証」への一体化を強いることは、国民の健康・保健ならびに公衆衛生上の国の「義務」から、利用者による「申請」へ変更することによって、事実上は「任意」であるはずの申請を義務化、つまりは国民に新たに「義務」と「責任」を課すものである。日本国憲法に保障された国民の人権と、それを守り、擁護する国の役割・義務を根本から転換するものであり、到底認めることはできない。
新医協(新日本医師協会)は、これら改定法の問題点を明らかにし、2024年秋の健康保険証廃止を中止に追い込むため、広く国民と連帯し、運動と闘いを続けていく決意をここに表明する。